「私の名はメガネほむら。かつては見滝原中学に通う平凡な一中学生であり、退屈な日常と戦い続ける下駄履きの生活者であった。
だが、あの夜、ナイトメア退治のときに目撃したあの衝撃の光景が私の運命を大きく変えてしまった。
突然マジカルバナナやったその翌日から、世界はまるで開き直ったかのごとくその装いを変えてしまったのだ。
いつもと同じ町、いつもと同じ角店、いつもと同じ公園。だが、なにかが違う。クラスの学友はみなゾンビ顔になり、さやかの
ウザいのろけ話もとだえ、歩き食いであわただしく食事をする杏子の姿もない。この町に、いやこの世界に我々だけを残し、
あの魔獣たちは突然姿を消してしまったのだ。数日を経ずして幸せな日常という名のときが駆け抜けていった。
かくも静かな、かくものんびりした生活をいったい誰が予想しえたであろう。魔法少女が過去数千年にわたり営々として支えた
文明とともに、魔獣との戦いの日々は終わった。しかし、残された我々にとって終末は新たなるはじまりにすぎない。
世界が終わりを告げたその日から、我々の生き延びるための戦いの日々が始まったのである。
奇妙なことに、マミ家の冷蔵庫は、押し寄せる杏子やべべをものともせず、その勇姿をとどめ、ケーキ類の豊富なストックを誇っていた。
当然我々は、ナイトメアの撲滅という大義名分のもとに見滝原中学を拠点と定めた。しかし何故か早乙女先生は終末思想にかぶれて、
生涯独身を宣言。続いて杏子、さかやとの同居を開始。
そして巴マミは、日がな一日列車砲を乗り回し、おそらく欲求不満の解消であろう、ときおり発砲を繰り返している。何が不満なのか知らんが、
実に可愛くない。あの運命の夜からどれ程の歳月が流れたのか。しかし今、我々の築きつつあるこの世界に時計もカレンダーも無用だ。
我々は、衣食住を保証されたサバイバルを生き抜き、かつて今までいかなる先輩魔法少女たちも実現し得なかった地上の楽園を、あの永遠の
シャングリラを実現するだろう。ああ、選ばれし者の恍惚と不安、共に我にあり。魔法少女の未来がひとえに我々の双肩にかかってあることを
認識するとき、めまいにも似た感動を禁じ得ない。

ほむら著 見滝原前史第1巻 終末を越えて 序説第3章より抜粋」