話がそれるようですが、いまは「泣ける」映画しか大ヒットしません。
悲しくて泣くのでも、可哀想で泣くのでもなく、みんな感動して泣きたがる。
「泣けた」というのが映画への褒め言葉です。
ですから、作り手は、主人公にうまくいってほしいとそれだけを観客が願うようにもっていければ、
もうしめたものです。腕のいい作り手は、リアリティのある高い水準の映像の力で、
巧みに観客を引きずり回したあげく、どうしてそんなにうまくいくのかわからないまま、
上手に話を運んで大団円にもちこみます。すると、みんな何度も何度も泣いてくれます。
ひたすら主人公を応援して、きもちよく感動したがっているのですから。
そんなうまくいくわけがない、ということなど考えたくもないらしいのです。
目覚めた知性や理性はその「感動」の前には無力です。

高畑勲(アニメーション映画監督)