電車が通りすぎた。踏切の向こうにやはり彼女は立っていた。
遮断機が上がり僕たちは歩み寄った。
「アカリ」
「タカキくん」
すっかり大人の女性になった彼女に時間の隔たりを確かに感じた。
桜の舞い散る中を歩きながら少し話した
途切れてしまった手紙のこと。
学校や仕事のこと。
突然、彼女が向き直った。
「わたし、来月結婚するの」
驚愕。衝撃。絶望。
彼女の瞳にかすかに気遣う表情。
諦念。達観に似た感情。
「おめでとう」
「うん、ありがとう」
彼氏の話しを聞いた。
いい人なんだろうと思った。
次に会う約束も、連絡先もかわさないまま別れた。
「お幸せに」
「うん、タカキくんも」
背中を向けて歩きはじめた。
桜の舞い散るこの踏切で、いつかまた会えるだろうか?
いや、もう会うことはないだろうと、僕達は知っていた。
見上げると桜の向こうの青空に飛行機雲が伸びていた。
島の空を思い出した。
苦しいほど思い詰めていた日々を思い出した。
「島に帰るか」