明里の貴樹への感情は、小説版ではっきり書かれてある。
「あの男の子との想い出は、もう私自身の大切な一部なのだ。食べたものが
 血肉となるように、もう切り離すことのできない私の心の一部。
  貴樹くんが元気でいますようにと、窓の外の流れていく景色を眺めながら、
 明里は祈った」

それと『草の竪琴』を読んでるシーンがあったんで、そこからも連想できる。
『草の竪琴』の主人公にとって、大切な相手と木の上の小屋で過ごした数日が
掛け替えのないものとなったように、明里にとっても貴樹と過ごした子供時代と
あの雪の日が大切な想い出になってる、ってことだろう。

例えそれが、子供から大人に変わる不安定な時期でのみ成り立つ、
幻のようなもので、二度と戻らないものであったとしても。
草原を吹く風の竪琴が人々の物語を伝えるという話しのように、
自分と貴樹の物語も、岩舟に吹く風が奏でてくれるだろう、と。