■作品紹介
さて、このブレイブストーリーの大きなテーマとして
「大事な願い事のためなら、なにをやってもいいのかな?」というものがあります。
原作者である宮部みゆき先生は、一連のオウム真理教事件の事を思いながらこの作品を書かれたそうです。
「世の中をよい方向へ変えるためなら、多少の犠牲が出ても仕方がない」という考えについてです。
この現実世界は、不条理や「痛み」に満ちていて、それで
やっぱり世の中良くしていかなきゃならない訳ですが、
目的は手段を正当化するのか?一人の人間、一つのグループの言う「正義」を追求するためなら
そのためにはなにをやってもいいのか?というようなことを
漠然と考えながらこの作品を書き上げられたとのことです。

確かに、この世界は痛みと不条理に満ちていて、耐え難い状態にありますが・・・
そこで・・・「世界を変えるのか、それともこの世界を受け入れるのか」
という問題がこの作品の中では扱われています。
ブレイブストーリーは少年の成長というテーマを扱った作品です。
具体的に言うと、ワタルは家庭の崩壊という自分の運命を変えるために
旅に出る訳ですが、最終的には、自分の運命を変えられずに現実世界へと戻ってきてしまいます。
そういう点で見ると欝エンドなんですが、それでも現実を、運命を受け入れ、
それを乗り越えるという勇気を得て、現実世界に返ってくるというお話で、ハッピーエンドとも取れます。
この作品のキャッチフレーズは「これは、ボクの勇気のハナシ」ですが、
現実を、運命をありのままに受け入れるまでに成長するワタルのことを考えるならば
この作品がいかに「ブレイブ」(勇気)に満ちたものであるかが分かります。

この作品では、最後の方で影の自分と戦うシーンがあります。
その影の自分とは、自分の中の暗い部分、黒い部分のあらわえれです。
人は、自分は正義であると思い込み、自分以外のものに悪を見いだしてしまいがちですが
この作品では自分の中にも暗い部分、黒い部分があるということを思い起こさせてくれます。
ワタルは、そんな自分の影の部分は自分自身に他ならないということに気がついて
影の自分を受け入れるのですが、ミツルは影の自分にとどめをさしてしまします。
しかし、その影の自分は自分自身に他ならないので、結果的に自分自身に止めを刺してしまうことになります。

この作品は、現実世界には暗い部分があるけれど、それを乗り越える勇気、
また、自分の外だけじゃなく、自分の中にも暗い部分があるんだということを教えてくれています。

劇中でミツルはこう言い放ちます。
「人間はな、しょせん自分のことが一番かわいいのさ」
「いざとなると自己愛が前に出る。そうさ、他人のことなんかどうなったって知るもんか!」
ブレイブストーリーのもう一人の主人公であるミツルは心中孤児で、
非常に辛い過去を背負っており、自殺未遂まで犯してしまったことさえあります。
ミツルの願いは、一家心中によって失ってしまった妹を取り戻すことです。
そんなミツルの願いはあまりにも強すぎるため、多くの人を犠牲にしながら
願いをかなえるために旅をしてゆきます。そんなミツルは
「オレは自分の運命を変えるためだったらなんでもできる!」と言い放ちますが、
それに対してワタルは「自分の幸せのために誰かを木津付けるなんて間違っている!」と言います。
ワタルとミツルは背中合わせのような存在です。
ミツルはそれなりに葛藤しながらこの旅を続けてきたので、
どうかそんなミツルを愛し、そして許してあげてほしいのです。

このブレイブストーリーは、姫川明先生のマンガの帯に描かれているように
「愛と、勇気と、友情と、冒険と、少年に必要なコト全部つまった感動ストーリー」です。
姫川明先生のマンガは全一巻で500円ほどと非常にリーズナブルです。
映画版ももちろんおすすめですが「ちょっと見てみたくなった」
くらいに思っている方にとってはこっちのほうが丁度良いかもしれません。
ただ、原作である小説版のほうが非常に奥深く、そして大変完成度が高くなっているので
もしお気に召されるようでしたら、小説版ブレイブストーリーも是非とも読んでみてください。