中日新聞「アニメ大国の肖像」
─大学で映画を学んだ富野由悠季さんにとって、アニメ「鉄腕アトム」は
ひどい出来だった。
 アニメだって映画、動かなくてはいけない。
それを止めて見せることができるという発想は許し難かった。
それなのに虫プロに入社したのは、他に就職先がなく、フィルムを
いじれるなら御の字だと思ったからです。
─最初は仕事と割り切っていたが、半年もすると不満が沸いてきた。
 当時、虫プロで働いていたのは、映画的なセンスがない人たち。
僕は映画的な演出ができる確信があったので、アニメとは言えない電動紙芝
居でも、作りようはあると思うようになった。
そんな体質が分かるのか、僕が演出になると、先輩から徹底的に嫌われた。
「アトム」での僕の演出本数が一番になった時、みんなの視線が冷たかっ
た。
─「アトム」が終わると、虫プロを辞めた。

─子どもたちに物語の核心を見せることの重要性を知るだけに、富野由悠季さんが現代のアニメに向ける眼は厳しい。
 文化庁のメディア芸術祭の審査員として百数十本ものアニメを見たけど、大人を意識した作品ほど酷いものはない。
大人という顧客はエクスキューズがきくという了解があるから、オタク同士の会話のような作り方をしている。
そんな作品は僕が審査員の間は出品もしてほしくない。
一方、異議申し立てができない子どもたちにきちんと向き合った作品は、やはり見ていて面白い。