僕のパソコンには、ずっと大切にしまってあるAAがある
いつか出せる日がくるまで誰にも見せない
それは僕の弟が作ったAA
病院で携帯電話の使えない弟は、PHSでメールをするのが唯一の楽しみ
ある日、僕は味ぽんを知った病院内での、ささやかな誕生日
弟は銀色の端末を握りしめて満面の笑顔を浮かべていた「兄ちゃん、これスゴイねん!色々見れるし掲示板も書けんねん」
弟は難しい操作も覚えて
いつか退院したらコロニナでポイントを増やすんだ、と言っていた
しかし、僕は知っていた
弟は、もう遠くのアンテナに電波を飛ばすことは無いと「ねえ兄ちゃん、味ぽん動かへん」
午後の病室。元気のない弟と動かなくなった味ぽん僕は、せっせとファームアップをした
「兄ちゃん…ゴムが…ゴムが…」たまに僕がPCに繋いでいたのが災いしたのだろう
伸びきったゴムが充電を妨げて弟を悲しませた「味ぽんも病院に入れなあかんな」
慰めようとすると、弟は言った
「病人が使こうてるから、味ぽんも体悪ぅなるんかな?」残念ながら代替機は味ぽんではなかった病院に許可をとって、僕は弟にパソコンを貸したしかしパソコンは上体を起こさなければ操作が出来ない「味ぽん早よぅ治るといいねぇ」辛そうにキーボードを叩きながら弟が言った

修理の終わった味ぽんを持って駆け込んだ病室弟は僕を笑顔で迎えた
「兄ちゃん!これ見てみぃ」小さなノートパソコンに映っているのは見知らぬ端末
「新しい味ぽん出るんやて」
どこかのニュースサイトに大きく載っているそれは京セラのエアエッジホンだった

「良かったなぁ、出たらこれ買うてやるで」「ええよ、味ぽんがあるもん」
修理の終わった味ぽんを受け取り弟は言った「それに…兄ちゃん。もう無理するなて」弟は小さな体で病気と闘いながら
それでも僕や周りに気をつかっていた、必死になって「カッコええやんか、カメラも付いてる。これ買うたるで」液晶画面を見るフリをして僕は涙を隠した